GnuCashの使い方(1)

Date: 2023/05/15 (initial publish), 2024/03/11 (last update)

Source: jp/note-00059.md

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GnuCashは複式簿記

GnuCashは企業の会計で用いられる複式簿記を採用した本格的な会計管理ソフトです。以下は、Version: 4.13(Debian 12 Bookworm)ベースのメモです。(半年少々使った知見で、2024-03-11頃に大幅な内容の上書きをしています)

使い方さえ慣れれば、家計簿にも使えます。家計でも支払い方法が「現金」・「銀行振込」・「クレジットカード」と複雑になり見通しが悪くなりがちです。支払い方法に関わらず支出タイプごとに集計できるので重宝です。

ただ、GnuCashを使おうとすると、チュートリアルは日本語訳されているのですが、GnuCash Manualは英語しかないという問題もあります。

また、GnuCashのメニューは各言語の文字コード順にソートされたりするので、英語マニュアルとメニューの場所が微妙に違う問題があります。

さらに、会計とか簿記の世界は素人には辛い専門用語が多いという課題があります。会計用語は、「帳票」の英語が「Reports(レポート=報告書)」だったりと、英語のほうが分かりやすいこともありますが、対応関係で混乱してしまいます。

そこで、英語と日本語で起動させ比較して状況を整理し、また参考サイトのリンク集を作成しました。素人なので、間違った部分あるかもしれません。

普通に GUI から日本語で直接起動は別のテクニックを参考にしましょう。

会計用語の日英比較整理

まず、メニューにある気になる項目の日英比較を以下に作成しました。

English Japanse
Account 勘定科目
Account Summary 勘定科目集計
Auto-clear 自動精算
Balance 賃借残高
Balance sheet 賃借対照表
Close book 決算
Formal 正式
General Journal 一般仕訳帳
Reconcile 照合
Reconciliation Report 照合帳票
Register 記録簿
Reports 帳票
Scheduled 予定
Total 合計
Transaction Report 取引出納帳
Transfer 資金移動
Trial Balance 試算表

会計用語の参考サイト

勘定科目ラベル

会計で用いる勘定科目ラベルの正式ラベルのDebit/Creditと異なるデフォルトのGnuCash独自の複式簿記入力欄のラベルを、各勘定項目(Account)タイプ毎に日英表記で整理しました。

位置↓ 正式名↓ \ タイプ→ 資産↓ 純資産↓ 負債↓ 収益↓ 費用↓
Position↓ Formal↓ \ Type→ Asset↓ Equity↓ Liabilities↓ Income↓ Expenses↓
左列→ 借方→ 増加 減少 支払 請求 費用
Left Column→ Debit→ Increase Decrease Payment Charge Expense
右列→ 貸方→ 減少 増加 請求 収益 値引
Right Column→ Credit→ Decrease Increase Charge Income Rebate

正式の複式簿記では、左の列が借方・かしかた(Debit)、右の列が貸方・かりかた(Credit)と一貫してラベルされています。

デフォルトのGnuCashでは、各列のラベルを上記の表のように勘定項目(Account)タイプごとに素人感覚に合う言葉を選び複式簿記の標準表現を置き換えて表示しています。

ただ、世間一般の会計処理に関する文書と表記が違うし、各勘定科目ごとに名前がころころ変わったり、右左が逆になったり余計ややこしい感もあります。

私は、勘定科目ラベル表記法は複式簿記の標準表現の「借方(Debit、左)」と「貸方(Credit、右)」で統一されるように、編集 -> 設定 -> 勘定項目 -> ラベル (Edit -> Preferences -> Accounts -> Labels)の「正式な勘定科目ラベルを使う」をチェックして有効化しています。

「借方(Debit)」と「貸方(Credit)」を、素人目線で翻訳します。

勘定項目自体は、先人が青色申告に合わせたテンプレートや、エンジニア向けテンプレートがありました(別記の「Debianで青色申告2023 (e-Tax)中の参考にした先人のウエッブページのリンク参照。

私の場合は外貨が絡んだし、ほとんど買ったものもなかったので、新たな我流のテンプレートを作りました。これらすべてを、拾いやすいGITHUBに置いときます。

表示(View)

ずっとコンパクトでカーソールの動きが少なく入力しやすい「基本元帳」で、「おこづかい帳」風に使っていた「表示」を見直しました。

「表示」のプルダウン選択肢の専門用語を、素人目線で翻訳します。

流石に「簿記」風の取引仕訳帳の表示は、「簿記」風の勘定項目(Account)・借方(Debit)・貸方(Credit)という基本コンセプトと合致しわかりやすいです。

借方(Debit)・貸方(Credit)のどっちにどうつけるべきか混乱した際には「自動スプリット元帳」や「取引仕訳帳」にするのもありです。

今まで、全て「説明(Description)」に書き込んでいましたが、「説明(Description)」に支払先企業名(大丸等)、「備考(Memo)」に購入商品名(紳士服等)とするほうが良い気がしてきました。

貸借残高の正負符号

さて先程の、編集 -> 設定 -> 勘定項目 -> ラベル (Edit -> Preferences -> Accounts -> Labels)の「正式な勘定科目ラベルを使う」の上にある、「貸借勘定の正負を反転する勘定科目(reverse balance accounts)」という選択肢の意味や意図が不明瞭で気になりました。

結論としては、デフォルトの「貸方勘定項目(Credit accounts)」を選ぶのが良いようです。こうすることで、負(マイナス)の値(資産が出ていく)となる「貸方勘定項目」の、負債(Liabilities) と 純資産(Equity)」の集計結果が正の値で表示されるだけ」とのことでした。あくまで集計結果で、各取引の帳簿付の際の入力の数字の符号とか、借方・貸方の記載の仕方などは変わりません。

債務(Liability)に対する貸方(Credit)記載は、債務を増加させます。 「増加」は、必ずしも「ゼロからの正の方向が大きい」という意味ではありません。 債務の場合、それは「ゼロからの負の方向に大きい」ことを意味します。 同じことは、純資産(Equity)と収入(収益)(Income(Revenue))にも当てはまります。これらはすべて「貸方」のバランスの取れた勘定科目(Account)です。つまり、通常の残高が純貸方である勘定科目です。

この議論は、そもそもなぜこのような選択肢が提供されるかという理由の良い例です。 多くの人は通常、より大きなマイナス数になることで債務を増やすことが理解できますが、純資産と収入では理解に苦しみます。 一般的に、あなたはより多くのお金を保持することを「正(ポジティブ)負号=プラス符号」として、損失することを「負(ネガティブ)符号=マイナス符号」として受け取るでしょう。 しかし、この場合の「符号」は、アカウントが存在する会計方程式の側との関係であり、心理的な意味(ポジティブ=陽・ネガティブ=陰)ではないというのが全体像です。

会計方程式を考えると、貸借対照表(B/S)では以下です:

  資産(Assets) = 負債(Liabilities) + 純資産(Equity)

これを左辺に集めすべて和で整理すると:

  資産(Assets) + ( - 負債(Liabilities)) + ( - 純資産(Equity))                  = 0

これが、貸借残高の正負符号の選択肢で貸方勘定項目(Credit accounts)」を選ぶ理由かな。

ちなみに、純資産を展開すると以下です:

  資産(Assets) = 負債(Liabilities) + (収益(Revenue) - 費用(Expenses))

これを左辺に集めすべて和で整理すると:

  資産(Assets) + ( - 負債(Liabilities)) + ( - 収益(Revenue))  + 費用(Expenses) = 0

これは、選ばなかったけど「収益・費用」という選択肢の存在背景かな?

会計データーの入力

まず「勘定科目」(Accounts)を作成します。

取引のあった「勘定科目」(Accounts)を開くと、データーが入力できます。その際、相手先の勘定科目にもデーターが入力されます。これが入力の基本です。 慣れたら、スプレッドシートで同様のことをするより遥かに効率的です。

銀行の記録やクレジットカードの記録は、CVS形式でダウンロードして読み込んでいます。日本語の場合、UTF-8でなくShiftJisのことも多いので日付フォーマット対応やエンコーディング変換は要注意です。

ちなみに、ツール(Tools)->一般仕訳帳(General Journal)で表示される一般仕訳帳があります。これからも編集可能ですが、何でも出来すぎて危険なので日常的な入力には使わないようにしています。

販売時に請求書(INVOICE)を発行し、会計データーを入力

WARNING: 以下は所詮素人の自分用のメモで、間違っていたり、誤解を招く内容が含まれる懸念があります

販売時に掛売上を計上する。

借方科目 貸方科目
売掛金 売上高

入金予定日に入金を照合し、売掛金の消込みを行い、会計データーを入力

たとえば

借方科目 貸方科目
入金口座 売掛金
支払手数料

取引負担出費を立替金で支払い、会計データーを入力

フリーランスの顧客負担の交通費などの立替金は、資産の科目で、以下の記帳です。

借方科目 貸方科目
立替金 現金

取引先負担出費の立替金の入金を照合し、会計データーを入力

たとえば

借方科目 貸方科目
入金口座 立替金
支払手数料

プライベート資金を事業用に充当し、会計データーを入力

プライベート資金を事業用に充当するときは、個人事業主の場合の特有の「事業主借」とか「事業主貸」といった無利子の貸借処理をすれば良いようです

借方科目 貸方科目
現金 事業主借

とか、

借方科目 貸方科目
事業主貸 現金

こうしておけば、個人事業主は事業用の銀行口座とプライベート用の銀行口座を分ける必要が、法律上は無いとのこと。(便利かどうかは別ですが。)

ちなみに、法人の「資本金」にあたる純資産を、個人事業主の場合「元入金」と呼ぶみたい。

経費の計上

経費は課税対象の所得(= 収入 - 必要経費 - 各種控除)に効くので重要とのこと。

PC も10万円以下なら経費計上でき、それ以上の価格のPCは減価償却費で計上できるとか。とにかく色々特例がありややこしそう

ただ非サーバーのPCは基本4年償却なので、、、、私のようにに古いPCを使い続けていると修理費・修理部品代以外は計上できないので、そこは悩むまでもない。

照合

「照・R」欄は、一文字表示なので最初意味がわかりにくいですが、意味は照合(Reconsile)欄でした。

データー行の照合(Reconsile)欄をクリックすると表示が切り替わります。

帳票(Report) == 会計データー集計結果の出力

「帳票」とはもとの英語で「レポート」ということに気づけばわかりやすいです。

会計データーの集計結果の出力ができます。

貸借対照表(Balance sheet)

よくB/Sと略される貸借対照表(Balance sheet)は、GnuCash(日本語)では、帳票->資産・負債と進んだ先に貸借対照表があり、GnuCash(英語)では、Reports->Asset & Liabilitiesと進んだ先にBalance sheetがあり、これを選択すると表示されます。会計用語はわかりにくいので、日英表記を交えておさらいします。

貸借対照表(Balance sheet)、資産=負債+純資産なので、左右同額でバランスします。

日本語だと「資産」と「純資産」は一見似た響きの言葉ですが、英語は「Asset」と「Equity」と違うように、まったく異種のコンセプトであることに注意が必要です。

「流動」か「固定」かの判別基準:

帳票->実験中(Reports->Experimental)から、日本でよく見る貸借対照表(Balance sheet)の左右出力ができます。

損益計算書(P/L)

よくP/Lと略される損益計算書は、GnuCash(日本語)では、帳票->収益・費用と進んだ先に、損益計算書損益計算書(P/L)というメニューのいずれを選択しても表示されます。一見不思議ですが、GnuCash(英語)では、Reports->Income & Expensesと進んだ先に、Income StatementProfit & Lossというメニューがあることに対応しています。P/Lに関する英国・米国の両方の表記慣習にあわせて両方のメニューがあるので、同一機能のメニューが2つになっています。

帳票->実験中(Reports->Experimental)から、日本でよく見る損益計算書(P/L)の左右表示出力ができます。

一般仕訳帳(General Journal)

一般仕訳帳(General Journal)は、仕分けを時系列で列挙した帳票で、GnuCash(日本語)では、帳票->収益・費用と進んだ先に、一般仕訳帳があり、GnuCash(英語)では、Reports->Income & Expensesと進んだ先に、General Journalがあり、選択すると「記録簿(Register)」タブに一般仕訳帳(General Journal)が表示されます。

また前述のように、ツール(Tools)->一般仕訳帳(General Journal)で表示される一般仕訳帳がありますが、これはデーター入力用で、レポート出力には使いません。

取引出納帳 (Transaction Report)と総勘定元帳 (General Ledger)

GnuCashのメニュー上の以下の2エントリーは、 GnuCashの同一機能への初期デフォルト設定違いへアクセスします。

レポート対象区間を設定し、日付順にソートして全アカウント出力すると、レポート対象区間が設定された一般仕訳帳(General Journal)が得られます。 詳しくは、GnuCashでの仕訳帳 (General Journal) の期間指定2を参照しましょう。

一方、総勘定元帳 (General Ledger)のメニューは、すべての取引を勘定科目ごとにソートした帳簿です。 会社の取引が勘定科目ごとにまとまって記載されるため、それぞれの残高を把握したいときなどに役立ちます。

聞くところでは、個人事業主が65万円等の青色申告特別控除の要件に、「複式簿記」での記帳が求められ、「総勘定元帳」と「仕訳帳」が必要なようです。

どうも、紙ベースの簿記の世界では、ある取引があると、「勘定科目」を使って「借方(左側)」と「貸方(右側)」に分け「仕訳帳」に記録するようです。 そして、転記先となった勘定項目ごとの「総勘定元帳」を「仕訳帳」の「元丁」の欄にクロスリファレンスとして記入したようです。

もちろん、GnuCashのようなソフトはこのようなデーターは一体の存在で、データー記入と同時に「総勘定元帳」が自動的に作成されていくので、別々の「総勘定元帳」と「仕訳帳」の入力必要なのではなく、期末にGnuCashに入れたデーターから綺麗に帳票(レポート)を作成しておけば、これらは簡単に対応できます。

ちなみに、データーの印刷出力の際には、ページのHTMLエクスポートを編集し綺麗にPDFに落とし組むことをされる方が多いようです。

帳票(レポート)類作成時に、ソート・フィルター・アカウント制約等などをしっかり「オプション」ダイアログで設定する必要があります。

「勘定科目」(Accounts)の設定時に、勘定科目コードを設定すると、希望順のソートに使えます。

各種チャートは表の表示もできる

月別の損益や項目別の支出がわかるような一見便利なチャートがあるのですが、デフォルトではマウスホーバーしないと数字が読めません。

これらのチャート表示時に、上の「オプション」というアイコンメニューを叩くと、色々細かな指定ができます。

この「オプション」のダイアログ中の、「表示」タブに「表を表示する」をチェックすると、月別の損益や項目別の支出等が数字で表示されるようになります。

データーのエクスポートとインポート

GnuCashでは、銀行やクレジットカードのデーターの読み込みにデーターのインポートは家計簿でよく使っている機能です。

この機能が最初よくわかっていませんでしたが、かなり強力です。この機能をうまく使えば、この帳簿データーの切り分け・統合ができます。

帳簿データーを開き、「ファイル(File)」->「エクスポート(Export)」->「取引をCSVにエクスポート」とすると、ダイアログで任意の期間・勘定項目に、限定指定をしながらCSVに切り出してExportできます。勘定項目にすべてを選べば、特定期間の一般仕訳帳となります。

空の帳簿データーは、「ファイル」→「エクスポート」→「勘定科目をエクスポート(A)」すれば空の帳簿データーができます。

さらにこの空の帳簿データーに、特定範囲に切り出した「取引をインポート」ができます。

データー保存ファイル形式と内部データー表現

GnuCashのデフォルトの保存ファイル形式はgzipされたXML形式(非圧縮のXML形式も設定から選択可能)のUTF-8テキストファイルです。

期間指定してのデーターファイルのGnuCashのデフォルトの保存ファイル形式への切り出し保存処理他も、データーのエクスポートとインポートを使うとCSVファイル経由で簡単にできます。

この GnuCash の XML 様式で組まれたデーター構造を見通しよく確認するのは、jaxexmlcopyeditor が便利でした。基本、単純に勘定項目の定義と、一般仕訳帳の記帳履歴のデーターみが含まれているようです。だから、Pythonでスクリプト書くなどさえすれば、GnuCashのデーターはかなりフレキシブルな処理ができそうです。

面白いのは、内部での金額表示が分数形式になっていることです。日本円は関係ないですが、米ドルは「2356/100」等が見当たります。これだと非10進法の旧英貨にも綺麗に対応できますね。

その他の機能

まあ、色々機能があります。すべてを使う必要は無いようです。

予算(Budget)

まだ使っていないので、よくわかりません。アクション->予算->...(Actions->Budget->…)でスタートする。予算と実績を月次で追いかけられそう。

決算(Close Book)

結論は、少なくとも年度の途中のタイミング指定でツール->決算(Tools->Close Book)は使わないのが良さそうです。

一見、ツール->決算(Tools->Close Book)という便利そうなメニューがあります。便利そうなので試してみたら、選択した日付で収益(Income)と費用(Expense)を集計し、純資産(Equity)に付け替えてくれます。具体的にはこれの実行の際に、「収益合計」と「費用合計」の行き先を聞かれます。何も入れずに、外貨残金だと適当な「US」なんて項目が純資産(Equity)にでき、そこに付け替えました。これだと、同じファイルを使い続けた際に、プログラムスタート時に表示される勘定項目の一覧表示での「収益合計」と「費用合計」の決算操作時期を超えた蓄積を防いでくれるだけです。このような決算操作をしてしまうと、この期間をまたいだ「収益合計」と「費用合計」の集計処理計算を、帳票(Report)メニューから正確にできなくなります。一方、決算で帳簿を閉じなければ、編集->編集->会計期間を指定して、帳票(Report)メニューから勘定科目集計を選ぶと、すべての勘定項目に関して指定期間の正確な集計値が計算されます。

決算ダイアログのHELPリンクからの正式マニュアルの結論(Conclusion)に、「決算した(=帳簿を閉じた)場合は、標準的なレポートが不正確となることを覚悟してください。」とまで言われているのも納得できます。

当面は、無難に毎年新しいファイルでスタートして行くのかな?空の新年度ファイルは、「ファイル」→「エクスポート」→「勘定科目をエクスポート(A)」で作り手動の移行処理で再スタートします。

INVOICE発行

使ってません。

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